「一条工務店でビルトインガレージを組み込みたい。 でも延床30〜40坪台で3LDKは現実的?」
結論から言うと、車1台+αのビルトインなら30坪台後半から、車2台なら40坪前後で十分現実的です。
本稿では“リビングから車を眺める”を軸に、東玄関+ガレージ直結動線、ガレージ上のルーフガーデン活用、音・排気・防火の勘所まで、3LDKのプランを平面寸法つきで文字図面化して解説します(図面イメージは数値と記号で再現)。
一条工務店のビルトインガレージ間取り実例を先に一覧
まずは延床30〜40坪台で実現可能な3つの実例プランを俯瞰します。
いずれも「LDK越しに車が見える」「玄関⇄ガレージ直結」「生活導線が崩れない」を満たす構成です。
3LDK 33.6坪(車1台+収納)東玄関|LDK16帖+畳コーナー
1F:玄関(東)→土間収納→屋内ドア→ガレージ/南面LDK16帖はピクチャーFIX越しに車を眺める構成。
2F:主寝室+子2室+洗面・ランドリー。 ガレージ上は物干しバルコニー。
| 総床 | ガレージ内寸 | 車室 | 見せ方 | 直結動線 |
|---|---|---|---|---|
| 約111㎡(33.6坪) | W3,000×D5,600×H2,400mm | 1台+棚 | LDK側FIX 2,000×1,800mm | 玄関土間→室内ドア→ガレージ |
ポイント:車幅1,800mm級までなら片側に600mmの歩行帯が確保でき、洗車用品や工具棚(D450)も収まります。
3LDK 36.9坪(車1台+バイク)東玄関|吹き抜け+ガレージ上ルーフガーデン
1F:東玄関→SIC→ガレージ直結。 LDK18帖に部分吹き抜け、ガレージ上をルーフガーデンに(物干し+外食)。
2F:主寝室+子2室+ホールワーク。 吹き抜け手摺越しにLDKと車が視線連携。
| 総床 | ガレージ内寸 | 車室 | 上部 | 視線計画 |
|---|---|---|---|---|
| 約122㎡(36.9坪) | W3,300×D5,800×H2,500mm | 1台+バイク1台 | 屋上テラス6〜8㎡ | LDKと2Fホールから二方向眺望 |
ポイント:ルーフガーデンの排水(ドレン2系統)と手摺高さ、ガレージ天井の遮音は同時に設計。
3LDK 39.8坪(車2台タンデム)東玄関|L型LDK+インナーテラス
1F:玄関→SIC→ガレージ→パントリー直結。 L型LDK20帖、ダイニング背面にインナーテラス(半屋外)。
2F:主寝室+子2室+ファミクロ。 ガレージは前後タンデム2台で道路間口を節約。
| 総床 | ガレージ内寸 | 車室 | 見せ方 | 家事動線 |
|---|---|---|---|---|
| 約132㎡(39.8坪) | W3,200×D10,500×H2,500mm | 2台(タンデム) | キッチン脇FIX+腰壁ニッチ | 玄関→SIC→ガレージ→パントリー→キッチン |
ポイント:タンデムは前後入替の運用を許容できる家庭向け。 奥側に自転車・工具コーナー(W1,800)を確保。
リビングから車を“美しく眺める”ための設計要点
“ただ見える”と“美しく見える”は別物です。 視線・光・距離の三点を整えましょう。
視線の通し方を最短で整える
FIXは横長2,000×1,800mmを基準に、TV配置と干渉しない壁面へ。
ソファ座位の目線(H1,100±)で車のAピラー〜サイドラインが抜ける高さにFIX下端を設定(床上600〜700mm)。
- FIXは三層ガラス+準防火エリアなら防火サッシ指定を確認。
- ガレージ側は演色Ra90以上のダウンライト×調光で塗色を美しく。
- 床は艶控えめグレー系タイルにして映り込みを抑える。
“座ったときにボディラインが水平に伸びる”のが満足のコアです。
距離と額縁効果
車側面〜ガラス面の距離は800〜1,000mmあると、額縁効果で立体感が出ます。
FIXの縁は黒目地or細框で引き締め、四周に5〜10mmの影(間接)を入れると展示感が増します。
照明・電源・床仕上げ
ガレージ照明は“面と点”。 壁面ウォッシャー(配光30°)でボディ側面、スポットでホイールを強調。
床は防滑タイル300角or塗床(高耐汚染)+1/100勾配。 EV充電100V/200Vは壁側面に。
東玄関+ガレージ直結動線の正解パターン
東玄関は朝日で明るい一方、道路付け次第でガレージ位置が決まりやすい。 直結動線は「玄関→SIC→室内ドア→ガレージ」。
SICとパントリーを“ハブ化”
SICにコート掛け・靴・ヘルメット・アウトドアを集約し、SIC脇の室内ドアでガレージへ。 買い物は“ガレージ→パントリー→キッチン”最短導線。
- 室内ドアは防火・気密タイプ。 下端段差5〜10mmで止水意識。
- SIC床はモルタル or タイル。 掃除口をガレージ寄りに配置。
- ベビーカー/チャイルドシート置場はW900×D600を確保。
“帰宅→荷降ろし→収納”が一直線だと生活が軽い。
雨仕舞と外水栓
シャッター前の庇は600〜900mm。 外水栓+ホースリール壁掛けで洗車導線を短く。 勾配は道路側へ1/100〜1/50。
ガレージ上ルーフガーデン活用(生活に効かせる)
“見せる”に寄せたガレージは上部が平らで扱いやすい。 テラス化するなら防水・排水・目隠しを先に仕様化。
快適性の三点セット
手摺:座位目線カット(H1,200前後)/排水:ドレン2系統+ゴミ受け/照明:足元+間接(2700K)。
- ランドリー直結で物干し“2歩”を実現。
- 外部収納ベンチに掃除道具やクッションを常備。
- 風荷重を見た可動オーニング下地を先仕込み。
“連続感(床高さ・色温度)”を合わせると使用頻度が跳ねます。
音・排気・防火|後悔を防ぐ技術メモ
ガレージは「音・臭い・法規」の三位一体で考えると失敗しません。
遮音と振動
ガレージ天井は高密度断熱+石膏ボード二重貼り(目地ずらし)、壁は室内側にグラスウール充填で空気伝播音を低減。
床はゴムマットをタイヤ下に敷き、ドアの“バタン音”はソフトクローザーで抑制。
換気とCO対策
排気は低位置から吸い出す壁付け換気扇+給気ガラリで差圧換気。 CO警報器をガレージ出入口上に。 エンジン始動はシャッター開放をルール化。
防火と区画
地域・区画により防火仕様の建具・サッシが必要になるケースあり。 LDKとの間仕切りは防火ドア相当の気密タイプ、FIXは仕様選定を確認。
駐車寸法の“リアルな”設計値(車種別目安)
実車の外寸+乗降クリアランスを確保してストレスを消します。
| 車幅クラス | 代表例 | 推奨内寸(単列) | 歩行帯 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 軽/小型(〜1,700) | ワゴンR/ヤリス | W2,800×D5,300 | 片側600〜700 | 棚D450が並ぶ |
| 中型(〜1,850) | プリウス/CX-5 | W3,000×D5,600 | 片側700〜800 | 自転車1台追加可 |
| 大型(〜1,900) | アルファード | W3,200×D5,800 | 両側600〜700 | 引戸だと楽 |
タンデム2台はD10,000〜10,500mmが目安。 奥側にW1,800のワークベンチが置けます。
3LDKプランの“生活側”を崩さないコツ
車優先で家事導線が壊れると満足は下がります。 3LDKでも“家族の毎日”を軽く保つ工夫を。
洗濯動線は2階完結 or 1階直線
2階完結:ランドリー→バルコニー/ルーフガーデン→ファミクロ(2歩)/1階直線:洗面→物干しインナーテラス→WIC。
- 物干しは陰干しと日干しの二ゾーンを。
- ファミクロはW2,000×D1,800以上あると家族で作業可。
“干す⇄仕舞う”が一直線だと毎日が楽。
玄関⇄パントリー⇄キッチンの短絡
買物導線が短いと体感満足が跳ね上がります。 パントリーはW1,200×D600を最小単位に、冷凍ストッカー置き場も確保。
プラン別・文字図面(寸法入りイメージ)
図面の代わりに“文字図面”で主寸法を可視化します。 実施設計時は構造・法規に合わせて調整してください。
Plan A|33.6坪・車1台+収納(東玄関)
1F:玄関W1,600→SIC W1,800×D1,400→室内ドア→ガレージW3,000×D5,600/LDK16帖(リビング側FIX 2,000×1,800、下端700)/洗面1.25坪・浴室1坪。
2F:主寝室6.5帖+WIC2.0帖/子4.5帖×2/ホールワーク1.5帖(可動デスク)。
Plan B|36.9坪・車+バイク・吹抜け+ルーフガーデン
1F:玄関→SIC→ガレージW3,300×D5,800/LDK18帖(吹抜け3帖分)/パントリー1帖。
2F:主7.0+子5.0×2+ホール3.0(吹抜け周り)/テラス6〜8㎡(ドレン2系統)。
Plan C|39.8坪・タンデム2台+L型LDK
1F:玄関→SIC→ガレージW3,200×D10,500→パントリー→キッチン/L型LDK20帖+インナーテラス。
2F:主7.0+子5.0×2+ファミクロ3.0。
コスト感と“満足の回収”の考え方
ビルトインは基礎・構造・防火の追加で坪単価が上がりやすい一方、雨天動線・防犯・趣味価値の“毎日効く”便益が得られます。
| 項目 | 初期コスト影響 | 便益 |
|---|---|---|
| ガレージ箱 | 基礎+外皮+シャッター | 雨天動線・盗難抑止・劣化軽減 |
| 見せる開口 | FIX高性能仕様 | 日常の満足・来客価値 |
| 換気・照明 | 設備追加 | 臭気/熱/演出の最適化 |
「満足=(接触回数×年数)÷初期+年次コスト」。 毎日“目に入る価値”は数字以上に効きます。
発注前チェックリスト(そのまま使える)
最後に、後戻りを防ぐ項目をリスト化。 打合せのたびに更新してください。
- LDKから車が“座位”で美しく見える高さ・幅のFIXになっているか。
- 東玄関→SIC→室内ドア→ガレージの直結動線にムダがないか。
- ガレージ内寸は車種+歩行帯(600〜800mm)を満たすか。 自転車/棚の位置は?
- 換気(排気位置低め+給気ガラリ)とCO警報器の位置は妥当か。
- 防火/準防火の仕様確認(建具・FIX・シャッター)。
- 床勾配と排水計画(掃除しやすいドレン位置)になっているか。
- ガレージ上を使う場合、排水2系統・手摺高さ・照明色温度の整合は?
- 家事導線(洗濯・買物・片付け)が“車優先”で崩れていないか。
これを満たせば、延床30〜40坪台でも“眺めて暮らす”ビルトインが無理なく成立します。
結論:30〜40坪台でも“毎日眺める”は作れる
一条工務店の3LDK×ビルトインは、車1台なら33〜37坪、タンデム2台でも40坪前後で実用+鑑賞のバランスが取れます。
鍵は〈視線〉〈直結動線〉〈技術(遮音・換気・防火)〉の三点。 さらにガレージ上のルーフガーデンまで一体設計すれば、昼は家事・夜は鑑賞の二毛作空間に。
“座った目線で美しく見えるか”“帰宅→荷降ろし→収納が一直線か”を図面で数値化し、チェックリストで詰めれば、後悔のない“リビングから車を眺める家”に着地します。
