一条工務店で蓄電池2台を導入する性能と費用|停電でも普段どおり暮らせる家にする条件とは

一条工務店で蓄電池を2台にするかどうかは、非常時の安心と平時の電気代の最適化をどこまで重視するかで結論が変わります。

同社オリジナル蓄電池は1台あたり7.04kWhで、2台なら合計14.08kWhという実用容量を確保できます。

停電時は最大5.5kVAで家中へ自動給電できるのが特徴で、冷蔵庫や照明、電子レンジ、在宅ワークの機器まで“普段どおり”に近い生活を維持しやすくなります。

一条工務店で蓄電池を2台にする狙いを最短で理解する

まずは「2台化の意味」と「1台との差」を端的に押さえます。

容量は倍増しても、使い方や機器の同時使用量が整っていないと実感値は伸びません。

停電時の生活像と、太陽光の発電量、家族の在宅時間帯に合わせて設計すると、14.08kWhの価値を取りこぼさずに使い切れます。

容量と出力

2台の総容量14.08kWhは、オール電化の家庭でも「夜間と朝の立ち上がり」を支える現実的なボリュームです。

最大出力5.5kVAは同時使用の上限を示す目安で、電子レンジやドライヤー、エコキュートのヒートポンプを重ねると一気に逼迫します。

したがって、容量だけでなく「どの家電を同時に動かすか」の運用ルールを家族で共有することが体感を左右します。

項目1台構成2台構成体感差
容量7.04kWh14.08kWh夜〜朝の持ち時間が倍増
停電時出力同等クラス最大5.5kVA同時稼働の余裕が拡大
自給運用短時間向き日跨ぎも狙える雨天時の安心感が上昇

カタログ値は出発点です。

実際は温水機器やIHの運転パターン次第で体感が変わります。

停電の想定

「普段どおり」を名乗るには、冷蔵庫、照明、通信、調理、給湯の五つが動くことが前提です。

2台構成なら同時稼働の余裕が出るため、ブレーカーの切り替えや家電の使い方を工夫すれば、在宅勤務や子どもの学習も止めずに済みます。

ただし、エコキュートの満水・追い焚き、IHの高火力、乾燥機の長時間運転を重ねると出力上限に触れやすく、優先順位づけが欠かせません。

  • 優先A:冷蔵庫・照明・通信機器・給気/換気。
  • 優先B:電子レンジ・炊飯器・ノートPC・ルーター。
  • 優先C:IH高火力・浴室乾燥・衣類乾燥・食洗乾燥。
  • オフ推奨:エコキュートの高温連続運転や深夜乾燥。
  • 家族ルール:高負荷家電は「1台ずつ順番に」使用。

停電時の同時使用数を減らすだけで、体感は劇的に安定します。

2台の価値は「余裕をルールで活かす」ことで最大化します。

昼夜の運用

太陽光がある家庭では、昼に発電→負荷供給→余剰で充電、夜は蓄電池で放電という循環が基本です。

2台構成の強みは、曇天や夕方の発電が弱い時間帯でも夜の持ち時間を確保しやすい点にあります。

また、時間帯別料金のエリアでは「高い時間は放電・安い時間は充電」の制御が家計の底上げにつながります。

設置と安全

2台化は設置スペース、重量、放熱、点検動線の確保が重要です。

屋内・屋外のどちらでも、直射日光や降雨、雪氷の影響を避け、周囲に可燃物を置かない基本を守ります。

非常時の手動操作やブレーカー位置を家族全員で共有し、年1回は停電モードの疑似訓練をしておくと安心です。

  • 点検スペースを前面600mm以上確保。
  • 直射/降雨/冠水の恐れがない位置を選定。
  • 分電盤の非常時切替の手順を紙で掲示。
  • Wi-Fi不通時でも基本操作ができるようにする。
  • 年次点検でファン/端子の状態を確認。

設置環境は寿命と有効容量を左右します。

「置き場所の質」は性能の一部と捉えましょう。

電気代メリット

2台化は非常時だけでなく、ピークカットや太陽光の自家消費率向上にも効きます。

売電単価が下がる局面では、昼の余剰を貯めて夕方〜夜に使う方が家計に有利です。

時間帯別料金を採用する電力会社なら、深夜の安い電力を補助充電して朝のピークをしのぐ運用も可能で、快適性とランニングの両立がしやすくなります。

蓄電池2台の費用相場と内訳を読み解く

費用は「機器本体+施工+電気工事+制御設定+保守」で決まります。

キャンペーンや太陽光の同時導入で割引が入ることもありますが、相見積もり時は内訳の粒度をそろえないと比較になりません。

ここでは概算レンジと、差が出やすい費目を具体化します。

相場レンジ

価格は地域や時期で上下しますが、2台構成は1台構成に比べて機器費が単純に倍近くなり、電気工事も増えます。

同時に、太陽光容量やV2Hとの組合せ次第で総額は広いレンジになります。

下表はあくまで目安として、比較の物差しにしてください。

構成想定内容機器+工事の目安備考
蓄電池1台7.04kWh+標準工事100〜160万円家族内の停電対策向き
蓄電池2台14.08kWh+増設工事180〜300万円同時使用と持ち時間が拡大
太陽光+2台5〜10kW PV同時350〜600万円屋根・電気で上下大

同じ総額でも、分電盤の系統分けや配線距離で工事費は変動します。

現地調査の写真と図面で条件を固定化しましょう。

差が出る費目

見積の「一式」に隠れやすい部分に注意します。

分電盤の改修や回路増設、系統ごとのラベル作成、停電自動切替の検証時間など、品質に直結する手間は価格に反映されるべき項目です。

保守費や延長保証の扱いも、長期コストに跳ねます。

  • 分電盤改修(非常用回路の明確化と余回路)。
  • 外壁貫通・配線ルートの保護材/気密処理。
  • 停電時動作の実地試験と家族向け説明の時間。
  • 監視アプリ/ゲートウェイの通信設定と更新。
  • 延長保証・点検費の年次スケジュール。

費目が具体的な見積ほど、仕上がりと安心は高い傾向です。

「安い理由」を必ず書面で確認しましょう。

回収の考え方

金銭回収は「売電単価」「自家消費率」「時間帯料金」の三点で決まります。

2台化は金銭回収だけを目的にすると見劣りする場合がありますが、「停電耐性」という保険価値を含めると納得度が上がります。

数字と安心を別々に評価し、両面で許容できる線を探るのがコツです。

要素上振れ条件下振れ条件
売電単価低い→自家消費有利高い→売電優位
自家消費率夕方負荷が大きい日中在宅が少ない
時間帯料金夜安・夕高の差が大従量一本で差が小

家族の在宅パターンを月単位で可視化すると、投資判断がぶれません。

家計アプリの電力データ連携が役立ちます。

停電でも普段どおり暮らすための設計と運用

機器性能だけでは「普段どおり」には届きません。

分電盤の系統分け、優先家電の選定、エコキュートやIHの賢い運転、通信の冗長化まで含めて初めて、5.5kVAの出力を生かし切れます。

設計段階でルールと回路を作り込み、引渡し後は家族で運用を磨きましょう。

回路設計

非常時に使いたい回路を「非常用サブ回路」にまとめると、停電時の切替がスムーズです。

冷蔵庫、キッチン小コンセント、廊下/LDK照明、ワークスペース、通信機器、給気/換気を優先し、大型ヒーターや乾燥機は通常回路に残します。

分電盤のラベルは家族が見ても一目でわかる表記にし、夜間でも読める位置と照明を確保します。

区分備考
非常用回路冷蔵庫・照明・通信・厨房小物蓄電池優先で自動給電
通常回路IH高火力・乾燥機・床暖停電時は使用自粛
個別専用エコキュート・EV手動運用/切替手順を掲示

設計時に回路図を家族共有のファイルに保存すると、緊急時の行動が早まります。

点検や模様替えでも迷いません。

家電の運用

停電時のコツは「短時間・高効率・順番」の三語に尽きます。

レンジや炊飯はピークを避けて順番に行い、照明は必要室のみ、空調はサーキュレーター併用で体感を底上げします。

給湯はエコキュートのお湯を賢く配分し、再加熱や長時間追い焚きは避けます。

  • 調理は「レンジ→IH弱火→保温」で電力平準化。
  • 冷蔵庫は開閉回数を減らし、温度設定を一段上げる。
  • 照明は人感+タスクライトで最小限に。
  • PCは省電力設定、モニター輝度を下げる。
  • 給湯は溜め湯を優先使用、再加熱は避ける。

小さな工夫の積み重ねで、持ち時間は大きく変わります。

家族の“停電オペレーション”を作っておきましょう。

通信と情報

在宅勤務や学習では、電気だけでなく通信の継続が必須です。

ONUやルーターは非常用回路にまとめ、モバイル回線のテザリング手順も紙で残します。

停電時は基地局側の電源も課題になるため、モバイルバッテリーやポータブル電源の残量管理も運用に組み込みます。

対象非常時の手当て備考
固定回線ONU/ルーターを非常用回路へ再起動手順を掲示
携帯回線テザリング手順とAPN情報家族分を印刷配布
電源小型UPS/モバイル電源月1回の充放電

「電気×通信」の二本立てが、普段どおりの鍵です。

紙の手順書は最強のレジリエンスです。

どんな家庭に蓄電池2台が向くかを見極める

2台構成は万人向けではありません。

家族構成、太陽光容量、在宅パターン、オール電化の有無、医療機器や在宅ワークの必須度といった前提がハマるほど、費用対効果と安心の両立が進みます。

反対に、在宅が少なく電力ピークが小さい家庭では、1台+運用見直しの方が合理的な場合もあります。

向く家庭の条件

下のリストに多く当てはまるほど、2台の恩恵を受けやすくなります。

逆に該当が少なければ、まず1台で運用を整え、必要に応じて増設を検討する二段構えが安全です。

  • 太陽光が5kW以上で夕方以降の消費が大きい。
  • オール電化でIH・エコキュートを採用している。
  • 在宅勤務/学習が多く通信を止められない。
  • 冷蔵/冷凍庫が複数台で食品ロスを避けたい。
  • 停電の多い地域や災害時の不安が大きい。

条件が整うほど「容量×運用」の相乗効果が出ます。

家族の一日の電力曲線を可視化して判断しましょう。

比較の観点

2台と1台を天秤にかけるときは、費用だけでなく「停電の長さ」「同時使用の必要度」「家計の平準化」を軸に比較します。

表は意思決定の物差しです。

どこを重視するかで最適解は変わります。

観点2台が有利1台で十分
停電耐性長時間/家族多い短時間/単身・共働き外出多
同時使用調理/学習/在宅仕事が重なる家電の同時使用が少ない
家計最適化時間帯料金/自家消費重視売電単価が高い地域

「どの場面で困るか」を具体的に想像すると、答えは自ずと出ます。

迷ったら“1日停電のシナリオ”を書いてみましょう。

導入の段取り

導入は「現地調査→回路設計→見積比較→契約→試運転→家族訓練」の順が王道です。

とくに試運転では、実際に主幹を落として停電モードを体験し、家電の順番やブレーカーの位置を全員で確認します。

年1回の見直し日を家族カレンダーに固定すると、非常時の対応力が段違いに上がります。

  • 分電盤・配線ルート・設置場所の写真保存。
  • 非常用回路のラベルと家電リストを作成。
  • 停電シナリオで30分の通し訓練を実施。
  • アプリの通知とバッテリー残量閾値を設定。
  • 年次でファーム/保証/点検日を確認。

導入後の“使いこなし”まで設計に含めると、投資効果は最大化します。

家族の行動が最大の省エネ装置です。

蓄電池2台で“普段どおり”を叶える条件を言い切る

一条工務店の蓄電池を2台にすれば、14.08kWhの容量と最大5.5kVAの出力で、停電時も冷蔵庫・照明・通信・調理を途切れさせずに暮らせる確率が高まります。

ただし、真価は「非常用回路の設計」「家電の同時使用ルール」「太陽光との昼夜運用」をセットで整えたときに発揮されます。

費用は180〜300万円が目安ですが、安心という保険価値と家計の平準化を両立できる家庭なら、2台化は強い選択肢になります。